2005年 04月 07日
サイモンの書評コーナー/Simon's Reader Updated |
オフィシャルサイトのSimon's Readerが久方ぶりに更新されました。今回の更新を読むと、ツアー中は読書の時間も書評を書く時間もほとんどなさそうだってことがよく分かりますが、このコーナーのファンも多いので、頑張って欲しいですね。「継続は力なり」だし。
今回取り上げられたのは2冊ともまだ日本語版では出ていないようですが、同じ著者の他の作品は日本語版で出ています。
原文はこちら; http://www.duranduran.com/bookclub/
------------------------------------------------------
サイモンズ・リーダーの更新が遅くなってごめんなさい。このところちょっと忙しくて。ツアーに出るとほんと、パソコンの前に座る時間は全然ないんだよね。
それで、僕の駄文を少なくして紹介する本の数を増やすことにした。かつてヒトラーが、「戦車も兵士の数もロシアの方がよっぽど多いが、勝つのは質で勝るドイツだ」と言ったら、それに対してスターリンが「量も質のうち(Quantity has a quality all of it's own)」みたいなことを言ったしね。
サイモンのお薦め: "The Confusion" Neal Stephenson著
彼の「バロック・サイクル三部作」シリーズ第1作の破天荒な艶笑物歴史ファンタジー、"Quicksilver"のことを考えると、2作目に対する期待度は非常に高かったはず。しかし、やってくれたよ。期待を裏切らないものになっている。スティーブンソン氏は堂々2作目を引っさげて登場って感じかな。僕がクイックシルバーを読み終わるやいなや、"The Confusion"が「近刊リスト」にお目見えした。それでどうだったかったかっていうと、僕はいいと思ったよ! 1作目も2作目も700頁前後ある。これだけ意表をつく奇妙な事件や意外な展開を次から次へと繰り出して、読者を釘付けにできるというのは本当に偉いと思う。しかも、すごく巧みに書いてあるから、いろいろな登場人物と最後まで一緒にいるような気がするよ。嫌いな登場人物ですらそうなんだから。ど派手な冒険譚が好きなら、すぐ読むべし(第1作目からでもよし)! これぞ冒険小説といえる本。
サイモンのお薦め: “Train” Pete Dexter著
戦後のカリフォルニアを舞台にした3人の物語。この3人とも実は周囲に順応できていない。衝撃的な事件というか、有り体な現実への反動で、当時の社会の堅苦しい行動規範に従うことができないからだ。表題となった主人公のトレインは、寡黙な天才ゴルファー。造園でも機械の保守でも、彼は身体を動かすことはほとんど何でも得意だ。手先が器用でコツを心得た達人だが、意思の疎通は全く苦手。ミラー・パッカードは優秀な警官だが、戦争中の南太平洋での経験から立ち直れずに苦しんでいる。暴力に快感を覚え、極端に危険な状況でしか生きている実感を得られないように見える。実際のところ病的な人格だ。3人が作る3角形のもう一辺に当たるのが、ノーラだ。彼女が経験した恐ろしい体験はつぶさに描写されている。彼女は感覚を失い、なすすべを持たないままである。
この社会から逸脱した3人の人生がいっとき交わり、しばらくは順調に進んで行く。
ピート・デクスターのスタイルで僕がとてもよいと思うのは、事細かに説明しないところだ。時に最低限の大筋だけを示して読者の想像にまかせることもある。かえってこれが格好いい。上品なやり方だと思う。
実際のところ僕はとても気に入っている。
当ブログの関連記事
2004/6/22/ money for the Reader アマゾンの売上
今回取り上げられたのは2冊ともまだ日本語版では出ていないようですが、同じ著者の他の作品は日本語版で出ています。
原文はこちら; http://www.duranduran.com/bookclub/
------------------------------------------------------
サイモンズ・リーダーの更新が遅くなってごめんなさい。このところちょっと忙しくて。ツアーに出るとほんと、パソコンの前に座る時間は全然ないんだよね。
それで、僕の駄文を少なくして紹介する本の数を増やすことにした。かつてヒトラーが、「戦車も兵士の数もロシアの方がよっぽど多いが、勝つのは質で勝るドイツだ」と言ったら、それに対してスターリンが「量も質のうち(Quantity has a quality all of it's own)」みたいなことを言ったしね。
サイモンのお薦め: "The Confusion" Neal Stephenson著
彼の「バロック・サイクル三部作」シリーズ第1作の破天荒な艶笑物歴史ファンタジー、"Quicksilver"のことを考えると、2作目に対する期待度は非常に高かったはず。しかし、やってくれたよ。期待を裏切らないものになっている。スティーブンソン氏は堂々2作目を引っさげて登場って感じかな。僕がクイックシルバーを読み終わるやいなや、"The Confusion"が「近刊リスト」にお目見えした。それでどうだったかったかっていうと、僕はいいと思ったよ! 1作目も2作目も700頁前後ある。これだけ意表をつく奇妙な事件や意外な展開を次から次へと繰り出して、読者を釘付けにできるというのは本当に偉いと思う。しかも、すごく巧みに書いてあるから、いろいろな登場人物と最後まで一緒にいるような気がするよ。嫌いな登場人物ですらそうなんだから。ど派手な冒険譚が好きなら、すぐ読むべし(第1作目からでもよし)! これぞ冒険小説といえる本。
サイモンのお薦め: “Train” Pete Dexter著
戦後のカリフォルニアを舞台にした3人の物語。この3人とも実は周囲に順応できていない。衝撃的な事件というか、有り体な現実への反動で、当時の社会の堅苦しい行動規範に従うことができないからだ。表題となった主人公のトレインは、寡黙な天才ゴルファー。造園でも機械の保守でも、彼は身体を動かすことはほとんど何でも得意だ。手先が器用でコツを心得た達人だが、意思の疎通は全く苦手。ミラー・パッカードは優秀な警官だが、戦争中の南太平洋での経験から立ち直れずに苦しんでいる。暴力に快感を覚え、極端に危険な状況でしか生きている実感を得られないように見える。実際のところ病的な人格だ。3人が作る3角形のもう一辺に当たるのが、ノーラだ。彼女が経験した恐ろしい体験はつぶさに描写されている。彼女は感覚を失い、なすすべを持たないままである。
この社会から逸脱した3人の人生がいっとき交わり、しばらくは順調に進んで行く。
ピート・デクスターのスタイルで僕がとてもよいと思うのは、事細かに説明しないところだ。時に最低限の大筋だけを示して読者の想像にまかせることもある。かえってこれが格好いい。上品なやり方だと思う。
実際のところ僕はとても気に入っている。
当ブログの関連記事
2004/6/22/ money for the Reader アマゾンの売上
#
by saltintherainbow
| 2005-04-07 17:46
| Ask Katy! (DD.com)